ょうよう》しておりました。
 と――。けがの功名なことには、伝六の予言がみごとに的中いたしました。総髪の毛束を風に吹かせて、人捜し顔に向こうからやって来た人影があったものでしたから、ひとみをこらしてよく人体を見定めると、まさに昼間深川の境内で最後におまじないをやっておいたそのひとりです。
「ね、だんな、どうですい。あっしの鉄砲玉だって、たまにゃ的に当たりやしょう」
 とんだところで伝六はすっかり鼻を高くしてしまいましたが、しかしそのときはもう右門が近よって、しらばくれながらかま[#「かま」に傍点]をかけていたときで――。
「おう、来てくだすったか。ご苦労だな」
「あっ――、暗くてよくわかりませんが、さきほど書面をくださっただんなですね。うちにけえってみると、いつもらったものか、ふところにあいつがへえっていたもんだから、あっしもびっくりしちゃいましてね」
「そうかい。とんだおつなまねしてすまなかったが、知ってのとおり、ちと内密に頼んだ仕事だったものだから、人に見とがめられちゃあとぐされが恐ろしいと思ってな、ちょっとばかり隠し芸をしたまでさ」
「ええ、そうでがしょう。大きにそうでがしょう。
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