うですね」
「と思って、おれもいま考え直しているんだが、どうやらこいつ相当に知恵を絞らなきゃならんかもしれんぜ」
 事実において、今となってはもうそう簡単に見くびることができなくなりましたものでしたから、右門はいかにしてこの失敗をつぐなったらいいか、捜査方針についてもう一度初めから出直す必要に迫られてまいりました。あくまでも色ざんまいのうえの毒殺とにらんで、このうえともにその点へ見込み捜査をつづけていくならば、もっと方面をひろめてかたっぱし出入りの女を当たってみる必要があるのです。でなくば、全然出直して見込み捜査を捨ててしまい、いわゆる大手攻めの常識捜査を進めていくか?――行くならば、第一に当たってみることは、あのときの祭りにつかった問題の横笛がなんぴとの手を経ていずこから渡ってきたか、まっさきにまずその出所を調べることが必要でありました。それから、第二は毒の出所――。思うに、回りの猛烈であるところから判断すると、必ずや鴆毒《ちんどく》にちがいないので、鴆毒ならば南蛮渡来の品だから、容易にその出所を知ることは困難ですが、しかし、いよいよとならばそれもまた大いに必要な探査でした。
 時刻
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