たんで、あっしの力でできるかぎりの素姓を洗ったんですよ」
「偉い! 大いに偉い! おれも実あ今ちょっとそのことが気になったんで、わざときいてみたんだが、そこへきさまも気がつくたあ、なかなか修業したもんだな。おめえのてがらを待ってるとかいったその女の子のために、久しぶりで大いにきさまをほめといてやろう。やるが、それにしてはしかし、生国が三河だというだけの洗い方じゃ少し心細いな」
「だから、そのほうもだんなの知恵を借りたいといってるんでがすよ。とにかく、生国が三河であるということと、十年ばかりまえからあそこで今の質屋渡世を始めたってことだきゃはっきりと上がったんですが、それ以上はあっしの力でどうにも見込みがたちませんからね、じゃ別口でもっと当たってやろうと思いやして、子せがれの人相書きやかっさらわれた前後のもようをいろいろにかき集めてみるてえと――」
「何か不審なことがあったか」
「大あり、大あり。消えてなくなったその子せがれは、十だとか十一だとかいいましたがね、女中の口から聞き出したところによると、質屋の子せがれのくせに、だいいちひどく鷹揚《おうよう》だというんですよ。金のありがたみなん
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