六なぞの参った節も、なるべく高く融通するがよいぞ。では、いずれも下げつかわしてやるゆえ、そうそう退出いたせ。あ、待て待て、それなる青まゆの女、昨夜の酒の代はなにほどじゃ。なに、気は心じゃからいらぬと申すか。上の座にある者がさようなまいないがましいものを受けるは本意でないが、新規お取り立て祝いのふるまいとして、今回かぎり飲み捨ててつかわすによって、爾今《じこん》道なぞで会うても、予にことばなぞをかけてはあいならんぞ」
それから立ち上がると、むっつり右門はそこの三方にのっかっていたきよめ塩をひとつまみつまみあげて、ぱッぱッと自分のからだにふりかけました。職務のためのこととはいいながら、前夜来のあだがましかった青まゆの女との不潔な酒のやりとりに、濁ったからだを浄《きよ》め潔《きよ》めるように、ばらばらとふりかけました。
底本:「右門捕物帖(一)」春陽文庫、春陽堂書店
1982(昭和57)年9月15日新装第1刷発行
1996(平成8)年12月20日新装第7刷発行
入力:大野晋
校正:ごまごま
2000年1月5日公開
2005年6月29日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全24ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング