に書かれた通信の文句を読んでいたらしいようでしたが、そうか、事急だ――突然そうつヤやくと、大急ぎにさるを背負って、あとから来たのといっしょに足を早めながら、いずこにともなく城下の夕暮れやみに消え去りました。
それとも知らずに、その怪しいできごとがあって一|刻《とき》ほどすぎたのち――。今、忍《おし》のご城内では、何か高貴のおかたでもこよい城中に迎えるらしく、熨斗目麻裃《のしめあさかみしも》の家臣たちが右往左往しながら、しきりとその準備に多忙をきわめているさいちゅうでした。しかし、よほどそれは内密のお来客とみえて、準備に当たっている者はいずれも黙々と口をとじたきりでした。しかも、不思議なことに、高貴のおかたと見えるそのお来客の接待場所は、ついふた月ほどまえに松平伊豆守がわざわざそのために造営さしたお庭つづきのお濠《ほり》ばたの、ほんとうに文字どおりお濠ばたの数寄《すき》をきわめたちいさな東亭《あずまや》でした。唐来とおぼしき金具造りの短檠《たんけい》にはあかあかとあかりがとぼされ、座にはきんらんのおしとねが二枚、蒔絵《まきえ》模様のけっこうやかなおタバコ盆には、馥郁《ふくいく》として沈
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