古今|未曾有《みぞう》の出世となったわけで、だからその功を盗まれた彼女らの父親が、悲憤のうちに悶死《もんし》したのは当然なことにちがいなく、しかし、その臨終のときに父親は、まだいたいけな子娘だった彼女ら姉妹に、おどろくべき一語を言いのこしたのです。ふくしゅうをしろ。必ずこのふくしゅうをしろ。それも最も残忍な方法で。あの名笛は七年間の心血をそそいだものだから、それに相当するだけの最も残忍な方法で、必ずふくしゅうをしろ――実に恐るべき一語といわなければなりませんが、ことほどさように、彼女らの父親の悲憤のさまが彷彿《ほうふつ》と思い浮かべられますが、だから、久之進がいくぶんの罪滅ぼしというつもりから、彼女ら姉妹をその邸内に引き取ってくれたのをさいわいに、そのふくしゅうの機会をねらっていると、十年ののちに好機きたる! あの片目の用人が、何かのことから手討ちにされて首を飛ばされてしまったのです。ところが、その首の形相がすごいにもすごいにも、半眼をあけてきっと久之進をにらみつけたものでしたから、伊豆守が折り紙をつけたとおり、小心なにわか旗本の小田切久之進は、その夜からうなされるというわけで、そこへ
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