やけよ!早く来い――眠りよ!覚めよ……
つめたい灰の霧にとざされ 僕らを凍らす 粗い日が
訪れるとき さまよふ夜よ 夢よ ただ悔恨ばかりに!

X 朝やけ

昨夜の眠りの よごれた死骸の上に
腰をかけてゐるのは だれ?
その深い くらい瞳から 今また
僕の汲んでゐるものは 何ですか?

こんなにも 牢屋《ひとや》めいた部屋うちを
あんなに 御堂のやうに きらめかせ はためかせ
あの音楽はどこへ行つたか
あの形象《かたち》はどこへ過ぎたか

ああ そこには だれがゐるの?
むなしく 空しく 移る わが若さ!
僕はあなたを 待つてはをりやしない

それななにぢつと それのベットのはしに腰かけ
そこに見つめてゐるのは だれですか?
昨夜の眠りの秘密を 知つて 奪つたかのやうに



底本:「立原道造全集第1巻」角川書店
   1971(昭和46)年6月20日<BR>
入力:八巻美恵
1997年9月11日公開
2000年7月25日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあ
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