の若い軍人たちの考え方をけなしていられたんだから。」
「そんなにひどくけなしていらしって?」
「いつもの先生とはまるで人がちがっているような烈しさだったんだ。将来日本を亡ぼすものは恐らく彼らだろう、といった調子でね。」
道江は眼を見張った。そして急に何かにおびえたように肩をすぼめながら、
「そんなこと言ってもいいのか知ら。」
次郎は、いいとも悪いとも答えなかった。しかし彼の不満そうな眼が、あきらかに道江のそんな質問をけなしていた。彼はひとりごとのように、すぐ言った。
「朝倉先生だけだよ、今の時勢にそんなことが堂々と言えるのは。」
道江は心配そうに次郎の顔を見つめていたが、
「もし、おやめになるのがほんとうだったら、どうなさる。」
「むろん、留任運動さ。朝倉先生がやめられたら、学校はもうまるで駄目なんだからね。きっとみんなも賛成するよ。いや、賛成させて見せるよ。僕、きょう、学校でそんな噂をきいたときから、そのつもりでいるんだ。」
「でも、そんなことなすったら、次郎さんたちも大変なことになるんじゃない?」
「どうして?」
「だって、先生のおやめになる理由がそんなだと……」
次郎はき
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