には、たまらない侮辱を感じてテーブルの下で両手をぎゅっと握りしめた。
 すると少佐は、急にはじめのくだけた態度になり、
「わしも、君にかくす気がないということがわかって、すっかり安心した。かくす気があるかないかが、実は君の幸福のわかれ目だったんでね。」
 次郎はやはりテーブルの下で手を握りしめたまま、つめたい眼で少佐を見かえしていた。
「それで、ついでにもう少したずねたいことがあるんだ。しかし、そのまえに、君に誤解されてもつまらんから、ちょっと断っておきたいことがある。それは配属将校としてのわしの立場だ。わしは、ただ君らに、右向け左向けを教えるために学校に来ているんではない。わしの任務は君らの思想善導なんだ。君らが国家というものに十分眼を覚まして、健全な思想の持主になってさえくれれば、形にあらわれた教練の成績なんか、実は大した問題ではないんだ。で、わしは、いつも、わしが配属されているかぎり、この学校から、思想問題でとやかく言われるような生徒を一名も出したくないと思っている。だからこそ、わしは、家内にもよく言いふくめて、君らと親しくして行くようにつとめているんだ。わしの気持をよく理解して
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