というのではありません。本人の意志であろうとなかろうと、一旦本人が代表たることを引受けました以上、それだけの責任は取らせなければなるまいかと、それは私も覚悟いたしているのです。」
彼はそこまで言って眼をこするのをやめ、眼鏡をとりあげてそれをかけると、一わたりみんなの顔を見まわした。そして今度は急に声に力を入れて、
「ただ、私がせがれのことを申上げますのは、今度の問題がよほど巧妙に仕組まれていて、恐らくたいていの生徒は自分でも気づかないうちに、とんでもないところに引きずって行かれるのではないかと、それを心配いたすからです。元来、私のせがれは、……親の口からこんなことを申してはお耳ざわりかと存じますが、どちらかというと万事につけ思慮深い方で、今度の問題でも、先ほど申しますとおり、最初から慎重に考えて反対をとなえたのですが、どうもその反対を押しとおすわけにはいかない事情がある。と申しますのは、留任運動の急先鋒、……それは朝倉先生と何か思想的に深い関係をもっている四五名の生徒だということですが……その急先鋒の生徒たちが表向きに主張していることが至極もっともらしい主張で、誰も正面から反対の出来
前へ
次へ
全368ページ中156ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
下村 湖人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング