言辞《げんじ》を弄《ろう》してはばからないので、他の生徒に対する悪影響が甚しいし、学校としては到底教育の責任を負うことが出来ないというのである。
女の問題は、生徒間にはすでに知れ渡っており、その証拠を握っている生徒もあるが、周囲に及ぼす迷惑を考慮し、この際それは問題にしないことになった。
なお、次郎に対する同情的意見を述べた先生が二人ほどあった。その一人は、次郎の学級主任の先生、もう一人は、この会議の内容をもらした某先生自身であった。しかし、次郎の保証人を納得《なっとく》させるためには全職員一致の意見でなければ工合がわるい、という校長からの希望もあり、大勢がすでにきまっていたので、二人共強いては主張しなかった。
だいたい情報の内容は以上のようなものであったが、この情報は、三時間目の授業中、次郎が、即刻召喚《そっこくしょうかん》の紙片を受取って、教室を出て行ったことによって、もはや一点の余地を残さないものになってしまった。――即刻召喚の紙片というのは、「即刻」という大きな朱印の下に、呼び出す先生の名と呼び出される生徒の名とを記した小さな紙片でしかなかったが、それが授業の最中に給仕によって教室に持ちこまれるということは、呼び出される生徒にとって、いつも極めて重大な意義をもっていたのである。
次郎は、教室を出るまえに、机の中の自分の持物をのこらず雑嚢にしまいこんだ。それがまたみんなの注目をひいた。彼はその雑嚢を肩にかけると、ほとんど無表情に近い顔をして生徒たちを見まわし、それから先生におじぎをして教室を出て行ったが、その様子には、先生も生徒たちも何か異様な圧迫を感じたらしく、彼の足音がきこえなくなるまで教室は水の底のように静まりかえっていた。
次郎を呼び出したのは、学級主任の黒田先生だった。次郎は、この先生とはふだん特別の深い交渉はなかったが、現在の先生の中では一番いい先生だと思っていた。で、即刻召喚の紙片を手にした瞬間、この先生が自分の学級主任であってくれてよかった、という気がしたのだった。
次郎の顔を見ると、黒田先生はすぐ自分の席を立って、彼を監督室の隣の室につれて行った。宝鏡先生の事件以来、この室にはいるのは四年ぶりである。テーブルには相変らず虫のくった青毛氈《あおもうせん》がかけてあり、「思無邪」と書いた正面の額も、昔どおりであった。
二人が腰をおろ
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