だ。それに、あと始末は本田がひとりでつけるだろう。」
「はっはっはっ。」
 そんな会話も取り交わされていた。
 午ごろになって、職員室の掲示用の黒板に、つぎの文句が記されていた。
「本日放課後、第一会議室において緊急職員会議開催につき、事務職員以外は洩《も》れなく参集せられたし。」
 それを最初に見つけた一生徒は、鬼の首でもとったように、すぐそのことを生徒仲間につたえた。すると生徒たちはまた新しい話題で興奮しはじめた。朝倉先生を見送って、ともかくも事件が一段落ついたあとの最初の職員会議であり、それに、第一会議室が、いつも秘密を必要とする会議に使われるのを生徒たちはよく知っていたので、それが何を意味するかは、彼らにもすぐ想像がついたのである。
「いよいよ処罰会議だぜ。今度は相当きびしいかも知れんよ。」
「何しろ、曾根少佐が頑張っているからね。」
「しかし、曾根少佐は問題をあまり大きくしたくない考えだっていうじゃないか。」
「まさか。あいつにそんなやさしい考えなんかあるもんか。」
「やさしい考えからじゃないよ。それがあいつの手なんだよ。」
「手だっていうと?」
「自分が配属将校でいる間は、思想問題は大丈夫だっていうところを見せたいんだってさ。」
「ふうん。そんなことを考えているんか。じゃ処罰は案外軽いかな。」
「僕は軽いと思う。退学なんかあまりないんじゃないかな。第一、あんまりひどいことをやると、僕たちもだまっておれんからね。そうなると、また学校が困るだろう。」
「曾根少佐も、それを心配しているんだよ、きっと。」
「自分の名誉のためにか。」
「ふっふっふっ。」
「しかし、一同訓戒程度ですんだら、蟇の効用もたいしたもんだね。」
「そんなわけには行かんよ。白鳥会の秘密送別会のことは、憲兵隊が問題にしているというし、曾根少佐だって、もうどうにも出来んだろう。」
「少くとも、本田だけは危いね。血書のこともあるし。」
「あいつ、少し図《づ》にのりすぎていたんだ。仕方がないよ。」
「そのくせ、ストライキだけにはいやに反対していたんだが、あれはやっぱり朝倉先生に対する忠勤《ちゅうきん》のつもりだったかね。」
「さあ、どうだか。それも一種の手だったかも知れんぜ。」
「そうだと本田もあてはずれだね。曾根少佐は今でも本田をストライキの煽動者《せんどうしゃ》だと見ているっていうじゃないか。」
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