たんだね。」
「教わりません。」
「案外、君の兄さんものんきだなあ。今日、帰ったら、よく教わっとけよ、あの意味を。」
 佐野は、そう言って、読みかけていた本の頁をめくった。
 次郎は、しかし、もう帰るまで辛抱が出来なかった。彼は一心に額を見つめて判読しようとつとめた。「白鳥」の次の字は「入」という字にちがいないと思ったが、しかしそのあとの二字がどうしても読めなかった。
「おしまいの二字は何という字です。」
 彼は、とうとうまたたずねた。
「芦花だよ。あしの花さ。」
「すると、白鳥……芦花に入る、と読むんですね。」
「そうだ。白鳥芦花に入る。……しかし芦という字は実際変な字だねえ。誰だって教わらなきゃ、わからんよ。」
「誰が書いたんでしょう。」
 額は無|落款《らっかん》だったのである。
「先生だそうだ。」
「先生が? どうして、誰にもわかるように楷書で書かれなかったんでしょう。」
「楷書で書くと、生徒より下手だから、みんなが有りがたがらないだろうって、冗談言っていられたよ。」
 佐野はそう言って笑った。次郎も笑ったが、すぐ真顔になって、
「どうして会の名をこの文句にちなんでつけたんでし
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