は眼をかがやかして、先生を見た。
「むろん道理がある。だから、新賀が、良心的にどうしてもそうでなくちゃならんと考えるなら、新賀にとっては、それが最善の道だ。」
「新賀君以外の人にとっては、最善の道ではないんですか。」
「最善の道であることもあれば、そうでないこともあるだろう。全体の調和とか秩序とかいうことを強く念頭に置いている人なら、新賀の考えている以上の道理を考えんとも限らんからね。」
大沢は考えこんだ。恭一は、一人でかすかにうなずいていた。誰も口を出すものがない。次郎は自分の問題が中心になっていることなどもう忘れてしまって、大沢の顔を一心に見つめた。彼の眼には、真剣に考えこんでいる大沢の顔が、これまでの彼とはまるで別人のように映ったのである。
「先生、要するに心境の問題ではないでしょうか。」
恭一が、しばらくして、めずらしく口をきいた。
「そうだよ。心境の問題だよ。」
と先生は、大きくうなずいて、
「一つ一つの事がらの正邪善悪にこだわるのでもなく、さればといって、それに無頓着だったり、良心にそむいて邪悪に妥協したり、また、大沢の言うように、ひねこびた聖人君子の真似をしたりする
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