いてそれを弁護しようとしているとしか思えなかったのである。
「うむ――」
と、先生は行きづまって、変な笑いをもらした。すると、次郎は、その笑いに食いつくように言った。
「先生、僕たちにそれをはっきり教えて下さい。僕たちは、先生が間違いをなさるのを面白がるなんて、そんなことちっともないんです。僕たちはただ困るだけです。だから、それを見つけたらすぐそれを言うんです。それが悪いんですか。」
「それは悪くないさ。しかし、わざと教室をさわがすために、それを言うのはいかんよ。」
「僕には、さわがすつもりなんかなかったんです。僕はホウキョウ先生が気の毒だったんです。」
「しかし、トミテル先生は――」
と「トミテル」に力をいれて、
「君に騒がすつもりがあった、と信じていられるんだ。先生は君にいつもそんな癖があると言われる。」
次郎は、急に默りこんだ。そして、それっきり、先生の顔をまともに見つめたまま、何を言われても返事をしなくなった。先生の方では、
「宝鏡先生は、君に教室をさわがすつもりがあったと言われるし、君はそうでないと言うし、私もどちらを信じていいか、実はわからないでいるんだ。」
とか、
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