をうけ、それから、まじまじと次郎を見ていたが、
「お母さんが、心配していなさりませんかな。早う帰って安心させてお上げ。」
 次郎はただ顔を赧《あか》らめただけだった。
 朝飯は、茶の間で家の人たちといっしょによばれた。広い土間の隅の井戸端で洗面を終ると、そのまま食卓に案内されたが、ゆうべにひきかえて、そこにはもうたくさんの顔がならんでいた。
「さあ、さあ。」
 と、七十ぐらいの、品のいい、小作りなお婆さんがまず三人に声をかけた。お婆さんと同じちゃぶ台には、三人の男の子がならんでいて、めずらしそうに次郎たちを見た。昨夜の老人の顔はそこには見えなかった。
 次郎たちのためには。べつのちゃぶ台が用意されていた。大沢がお婆さんにあいさつをしてそのそばに坐ると、恭一と次郎とがつぎつぎにその通りをまねた。さっきの女の人がちゃぶ台にのせてある飯|櫃《びつ》と汁鍋の蓋をとって、
「さあさ、めいめいで勝手に盛ってな。」
 と、自分は子供たちのちゃぶ台にお婆さんに向きあって坐った。
 次郎たちには、葱の味噌汁がたまらなくおいしかった。何杯もかえているうちに、顔がほてって汗をかきそうだった。
 食事中に、お
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