大沢は、少し眼を伏せて考えこんだ。
「なるほど、五年全体の名において大っぴらにそれがやれなくなれば、形式としては前よりはよくなるわけだ。しかし、実質的には一層始末に終《お》えないものになるかも知れん。実は、学校として、そのことで、これまで五年生に強圧を加えなかったのも、そうなるのを恐れたからなんだ。」
「すると、いつまでもこのままにして放って置かれるつもりだったんですか。」
「そうではない。君らの眼にはどう映っていたか知らないが、大垣校長が、赴任されて以来、内々最も苦心されて来たのは、そのことなんだ。幸い、葉隠の四誓願が、そのまま校訓同様のものになっていたし、校長は、あの大慈悲という言葉を強調して、じりじりと辛抱づよく今日まで努力してこられたんだ。もうそろそろまる四年になるね。校長が赴任されたのは今の五年生が一年の二学期をむかえたときだったんだろう。」
 朝倉先生は、そう言って、感慨深そうに、みんなの顔を見まわしていたが、
「吉田松陰の言葉に、天下は大物だ、一朝の奮激では決して動くものではない、それを動かそうと思えば、誠を積まなければならない、といったような意味のことがあるが、一つの
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