一面に咲いている中に真白な鳥が舞い込んだっていうのですわ。」
奥さんは、それだけ言うと、また微笑した。そして、
「もうこれでおしまい。ほほほ。」
と、謎のような笑い声を残して、階下におりて行ってしまった。
次郎は、それから小半時も、掛軸と額とを見くらべながら、ひとりで考えこんだ。しかし、いくら考えても、彼の頭では、「白鳥入芦花」と「まこと」とを結びつけることが出来なかった。彼は、芦原の中に、きょとんとして立っている良寛の姿を想像したりして、何だか馬鹿にされているような気がするのだった。
九 自己を掘る
次郎が「白鳥入芦花」の意味をどうなりつかみ得たように思ったのは、それからふた月以上もたって、彼が二年に進級したあと、はじめて白鳥会が開かれた晩のことだった。
その晩の話題は、期せずして、新五年生の下級生に対する態度に関係したことに集中され、とりわけ、大沢が級会において、多数の五年生を相手に猛烈な論争をやったことが、興奮と感激とをもって語られた。
「じっさい、大沢君の論鋒《ろんぽう》は鋭かったよ。痛快だったね。」
「やつらがいきり立てばいきり立つはど、大沢君、落ちつく
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