次郎物語
第三部
下村湖人
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)岐路《きろ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)独立不|羈《き》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)二 無計画の計画(※[#ローマ数字1、1−13−21])
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一 運命の波
次郎の中学一年の生活も、二学期が過ぎて、新しい春がめぐって来た。入学試験に一度つまずいた彼は、もうそろそろ青年期に入ろうとしているのである。
青年期になると、たいていの人が、程度の差こそあれ、理想と現実との板ばさみになって、光明か暗黒かの岐路《きろ》に立つものだが、読者が、これまで、いくぶんせっかちだと思われるほどの気持になって知りたがっていたのも、恐らく彼のそうした生活であったらしく私には思われる。で、私も、この巻では出来るだけ彼のそうした生活について語りたいと思っている。
だが、言うまでもなく、青年期の生活は、青年期だけで独立してはじまるものではない。青年次郎の生活を準備したも
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