になるように思われたのは、お祖母さんだった。それは、いうまでもなく、お芳の家庭におけるこれまでのぼやけた存在が、日に日に鮮明なものになって来たからにちがいなかった。お芳としては、ただ正直に真心こめて仂くだけのことだったが、その仂きが効果をあらわせばあらわすほど、そしてそれが俊亮に認められれば認められるほど、お祖母さんとしては自分の影がうすくなるような気がするのだった。恭一の学資の心配がなくなったのは、うれしいことにはちがいなかったが、それが恭一のことであるだけに、そのかげにお芳の力、ひいては大巻の力を認めないではいられないのが、たまらなくくやしかった。それも、大巻の家が遠方にでもあればまだしも、すぐ目と鼻の間にあって、日に何回となく双方から行き来するので、いかにも自分ひとりが人質にでもとられているような気がしてならなかったのである。
 お祖母さんのそうしたひがみは、何かにつけ、遠まわしの皮肉となってお芳の耳に刺さった。しかし、その痛みを感じたものは、お芳ではなくて、むしろ俊亮だった。しかもその俊亮でさえ、何もかも肚《はら》にのみこんで、表面では何ごともなかったような顔をしているので、お祖母さんとしてはいよいよもどかしくなり、その結果が、次郎と俊亮を相手に愚痴《ぐち》をこぼし、口ぎたなくお芳のかげ口を言うばかりか、俊亮を大の親不孝者とさえ呼ぶようになって来たのである。
 次郎にとって、お祖母さんのそんな愚痴が愉快なものでなかったことは、いうまでもない。しかし、それも今では、彼の日々の生活に大して暗い影をなげるというほどのものではなかった。どうせお祖母さんはこんな人だ、という諦めに、いくぶんのあわれみの情をまじえて、不愉快ながらもその愚痴を辛抱し聞いてるといったふうであった。そのことでは、俊三の方がいつもお祖母さんの機嫌を損じた。俊三は、お祖母さんの愚痴がはじまると、てんからあざ笑ったり、正面から反対したり、途中から逃げ出したりすることが多かった。お祖母さんはそんな時には、次郎に向って、「まだ俊三には何もわからないんだよ。」と嘆息するのだったが、次郎は、もし自分が俊三のような態度に出たら、お祖母さんはどんなふうに言うだろう、などと考え、心の中で苦笑しながら、やはりおしまいまで相手になってやるのだった。そして、そういうことから、お祖母さんは、何かにつけ次郎を身近に引きつけ
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