祖母さんも、僕の言うとおりにならなきゃあならないことですよ。」
「まあ、まあ大変なことになったね。」
 と、お祖母さんはお浜を見て、にこにこしながら、
「じゃあ、あたしもお浜のお伴《とも》をさしてもらいましょうかね。」
 お浜は、もうその時、眼にいっぱい涙をためていたが、やにわに畳につっ伏して、
「みなさん、ありがとうございます。勿体のうございます。」
 みんなは、それから、涼しいうちにというので、大急ぎで朝飯をすまし、支度をはじめた。俊亮は、その間に、店の者に命じて、蒲鉾《かまぼこ》だの、罐詰だの、パンだのを買い集めさせ、それをいくつにもわけて包ませた。ビールが何本か縄でしばられたのはいうまでもない。
「夕飯まえには帰って来るが、おひるは、何かですましておいてくれ。」
 そう店の者に言って、みんなが家を出たのは九時近くだった。
 お祖母さんのほかは、めいめい何か包をぶらさげていた。ビールは恭一と次郎の二人が捧につるしてかついだ。陽はもうかなり強く照りつけていたが、風があって、さほどの暑さでもなかった。みんなはいかにも楽しそうだった。お芳でさえいくぶんはしゃぎ気味だった。実際こんなことは、本田家はじまって以来の出来事だったのである。
 むろん、誰も次郎をませっくれだなどと思っているものはなかった。次郎自身でも、さっきそんなことを自分で気にしたことなど、もうすっかり忘れていた。彼の眼には、おりおりお鶴の赤い日傘がちらついた。そして、今日こうして、みんなで大巷を驚かすのも、あの日傘がもとだと思うと、彼はまた「運命」というものを考えないでおれなかった。
 彼は町はずれまで行くと、恭一に言った。
「きょうは何だか嘘みたいだなあ。父さんやお祖母さんまでが、いっしょに来るなんて……。でもあの時は恭ちゃんもうまくやったよ。」
「なあに、あんな工合になったのは、やっぱり次郎ちゃんの力さ。」
「そんなことないよ。」
 次郎は、そうは答えながらも、何か誇らしい気持だった。
(自分は、もう、どんな運命にぶっつかっても、それを生かしてみせるんだ。)
 そうした自信が、大巻の家に近づくに従って、彼の胸の底に次第に強まりはじめていたのである。

     *

「次郎物語第二部」は、こうして、次郎にとってこれまでにない幸福な日曜日に、その結末を告げることになった。次郎の一見極めて不幸であった過
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