追いこした。そして三四間も抜いたと思うころ、廻れ右の練習でもやっているようなふうを装って、木柵の隙間から二人の顔をのぞいて見た。
やはりお浜にちがいなかった。向こうもこちらを見ていた。そしてこちらが声をかけるまえに、
「まあ!」
というお浜の頓狂な声がきこえた。
木柵をへだてて、次郎とお浜とは向きあった。お浜の顔は、もう半分、木柵の間から、こちらに突き出している。
「まあ、まあ、お宅にあがるまえに、こんなところでお目にかかれるなんて、全く不思議ですわ。……でも、……」
と、お浜はけげんそうに柵の内を見まわしながら、
「どうして、こんなところに、たったお一人でおいでなの?」
「僕、乳母やだと思ったから、ここまで追っかけて来てみたんだよ。」
「そう? そうでしたの? よく見つけて下すったのね。あたし、今朝着きましたけれど、この近所に用があったものですから、ついでに、坊ちゃんの学校をそとから覗かせていただきたいと思って、わざとこの道をとおってみたところですの……。でも、こんなところでお目にかかれるなんて、ちっとも思っていませんでしたわ。」
次郎はうつむいて制服のボタンをいじくっていた。お浜は彼の姿を見あげ見おろしながら、
「あれから、もうそろそろ二年ですわね。でも、なんて大きくおなりでしょう。そうして制服を着ていらっしゃると、よけいお見それしますわ。今は坊ちゃんお一人だったから、すぐわかりましたけれど。」
お浜はそう言って、うしろをふり向いた。
「坊ちゃん、あの子、誰だかおわかり?」
次郎はうなずいた。彼は、お浜のうしろに立っている少女がお鶴であることが、もう、さっきからわかっていたのである。
お鶴は、ややうつむき加減に、左頬を見せていた。白いものを少し塗っているので、以前ほどに眼立たなかったが、お玉杓子に似たあざは、やはり、もとのままだった。
「あの子も大きくなったでしょう。今日は、今から二人でお宅にお伺いしますわ。……坊ちゃんは何時ごろお帰り?」
「二時までだけれど、剣道だから、ちょっとおそくなるよ。」
「でも、三時頃には、お宅にお帰りになれるでしょう。あたしも、ちょっと買物をしますから、たいてい、ごいっしょごろになりますわ。お宅でゆっくり話しましょうね。」
「僕、なるだけ早く帰るよ。」
次郎は、そう言って、柵をはなれながら、ちらっとお鶴の方に眼をや
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