だろうな。」
 他の一人が追っかけるようにたずねた。
「次郎だと、弟だが……」
 恭一は、やっと答えて、眼をふせた。
「弟? そうか。そう言えば、今度君の弟が入学試験をうけるって、いつか言っていたようだね。」
「しかし、本田の弟にしちゃあ、すごく勇敢だね。ふだんから、そうなんか。」
 恭一はまた顔を赧らめたが、
「うむ、小さい時から乱暴だったよ。しかし、この頃はそうでもなかったんだが……」
「それで、その次郎君、どうしていたんだ、昨日は?」
「べつに何ともなかったよ。」
「君に、その話、しなかったんか。」
「ううん、ちっとも。……僕も君らの話をきいて、今はじめて知ったんだよ。」
「そうか。そうだと君の弟はいよいよ変った奴だな。」
「本田の手には負えんのじゃないかね。」
「だいいち、弟の方が本田を相手にしていないのだろう。」
 みんながどっと笑った。恭一はてれくさそうに苦笑して、顔をふせた。
「冗談はよそう。……どうだい、本田、君の弟ってのは、いったい、物がわかる方なのか、それとも、ただの向こう見ずか。」
 そう言って、まじめにたずねたのは、大沢雄二郎という生徒だった。彼は、小学校を出てから三年も町の鉄工場で仂いたあと、ある人に見込まれて中学校にはいることになったので、全校一の年長者だった。どっしりと落ちついて、思いやりがあり、しかも頭がいいので、「親爺《おやじ》」という綽名《あだな》でみんなに親しまれていた。とりわけ恭一は彼に親しんだ。親しんだというよりは、心から尊敬していたといった方が適当かも知れない。性格はまるでちがっていたが、物の考え方はいつも同じで、しかも世間を知っているだけに、大沢の方にずっと深みがあった。大沢の方でも恭一を真実の弟のように愛した。日曜などには、二人は、終日、人生観めいたような話をして暮すこともあった。
「物はわかる方だと思うがね。」
 恭一は、多少みんなに気兼ねしながら答えたり
「もの事をよく考える方かね。」
「うむ、去年一度入学試験で失敗したんだが、それから一年ばかり、しょっちゅう、いろんなことを一人で考えていたようだ。」
「僕、いっぺんも会ったことがないようだね。君の家でも。」
「ずっと田舎の親類の家にいたもんだから……」
「そうか……。」
 大沢は何か考えるふうだったが、それっきり口をつぐんだ。すると、ほかの一人が言った。
「どうだ
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