五分間はかかった。そのあと校長は、父兄の方に向かって自分の教育方針を話し、それで式は終った。
「りっぱな校長先生だな。」
式がすんで、校門を出ると、俊亮は次郎を顧みて何度もそう言った。次郎は嬉しかった。
*
翌日はさっそく始業式だった。
次郎が驚いたことには、組主任の先生に引率されて講堂にはいると、新入生の坐るすぐ右側の席に、もう五年生らしい生徒が高い塀のように並んでおり、その多くが、気味のわるい眼付をして、じろりじろりと新入生たちを睨めまわしていることだった。
次郎は、席につくと、頸をちぢめ、そっと隣の新入生にたずねた。
「僕たちの右の方に並んでいるの、五年生?」
「そうさ、五年生だよ。五年生の右が四年生で、三年生と二年生とが僕たちのうしろに並ぶんだよ。この学校では、一学期の始業式には、新入生との対面式があるんだから、いつもそうだってさ。」
隣の新入生は、いかにも物|識《し》り顔に答えた。次郎は、なぜかいやな気がして、それっきりうつむいてばかりいた。
やがて先生たちの顔がそろい、最後に校長がはいって来て、すぐに壇上に立った。そして、一同の敬礼をうけると、
「唯今より、二年以上の生徒と、新入学生との対面式を行う。」
と言った。
対面式は、べつに面倒なものではなかった。一年が右に、四年五年が左に、それぞれ向きをかえ、二年三年はそのままで、体操の先生の号令で、同時に敬礼をしあうだけだった。しかし、次郎の気持をいよいよ不愉快にしたのは、すぐ眼の前の五年生が、号令では頭を下げないで、一年生が顔をあげた頃になって、やっとばらばらに、礼を返したことだった。しかも、その顔付は、礼を返しているというよりも、あざ笑っているといった方が適当であった。
対面式がすむと、校長の始業式の訓話が始まった。まず新入生の方を向いて、上級生に兄事する心得を説いたが、それはほんの二三分で、校長の顔はいつのまにか五年生の方を向いていた。顔が五年生の方に向くと同時に、言葉の調子も高くなり、その眼付も光って来た。そして、
「どんなわずかな力でも、それを不正なことに使ってはならない。不正なことというのは慈悲心のない行いじゃ。武士道におくれをとらないというのも、慈悲心が内にみなぎっていてはじめて出来ることで、それがなくては、武士道も何もあったものではない。よろしいか。本校の生徒は
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