くらか変ったところがあったとすれば、それは徹太郎に対する彼の態度だった。徹太郎は、もう次郎にとって、ただの愉快な叔父さんではなくなっていた。その前で、べつに非常な窮屈《きゅうくつ》さを感ずるというふうでもなかったが、何か知ら、これまでのように彼を友達あつかいに出来ないものを感じるらしかった。そして、いつとはなしに、権田原先生に対すると同じような気持で、彼に対するようになって来たのだった。
「やっぱりお前は平凡な先生じゃ。」
「いや、今度は何と言われても、私の失敗でした。」
運平老と徹太郎とが、そう言って笑ったのは、それから間もなくのことだったのである。
学校での次郎の様子には、表面取り立てて言うほどの変化はなかった。どちらかというと、正木の家でと伺じように、いくぶん「大人になった」と先生たちの眼には映っていたらしい。中学校に失敗した連中のなかでも、彼の成績はずばぬけてよく、自然、級長もやらされていたが、彼はやるだけのことはきちんきちんとやってのけた。また、仲間に対する威力も相当で、彼が口をきくと、たいていのことは治まる、といったふうであった。こうしたことは、以前からもそうであったが、日がたつにつれて、それがいよいよがっちりとなって行くように、誰の眼にも見えたのである。
ただ、権田原先生だけは正木や本田といつも連絡《れんらく》があり、また徹太郎とも知合いで、いろんな機会に次郎の話をすることであったせいか、次郎の表面だけを見て、安心してはいなかった。そして、例の猪首を窮屈そうに詰襟のうえにそらし、我|関《かん》せず焉《えん》といったふうでいながら、教室では無論のこと、廊下を歩いている時でも、次郎には特別の注意を払っていたのである。
権田原先生が何よりも気がかりだったのは、次郎の顔から、大っぴらな笑いと怒りとが、次第にその影をひそめて行くことであった。笑うには笑っても、彼の笑いには時としてまるで声がなかった。以前のような、血の気にあふれた怒りなどは、ほとんど見られなくなっていた。そしてしばしば、可笑しくも何ともない、といった顔をしてみたり、腹を立てていながら、せせら笑いをしたりすることがあった。
「これはいかん。」
権田原先生は、おりおり一人でそうつぶやいた。そして、わざと教室でひょうきんなことを言ってみたり、校長に小言を食うほどの乱暴な競技を、組の生徒にやらし
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