で何かかたことと音を立てていた。そしてお芳は、おくれて起きてきた俊三のために、台所でお給仕をしてやっていた。
そこへ、だしぬけに、家の中の空気にそぐわない、はればれとした声で、
「お早う!」
と挨拶をして、黒のつめ襟の服を着た人がはいって来た。大巻徹太郎だった。
「やあ、お早う。さあどうぞ。」
と、俊亮は坐ったままで彼に挨拶をかえし、長火鉢の向こうに敷いてあった座蒲団をうらがえしにした。徹太郎はその上に無遠慮《ぶえんりょ》にあぐらをかきながら、
「ゆうべは宿直で、今帰るところです。」
「そう。それはお疲れでしょう。……ご飯は。」
「学校ですまして来ました。……ところで次郎君は来ていませんかね。」
「来ていますよ。」
「じゃあ、今日は、今から私のうちにつれて行きたいと思いますが、どうでしょう。恭一君も俊三君もいっしょに。」
「それは、よろこぶでしょう。……おい、次郎……恭一。」
俊亮が呼ぶと、二人はすぐ座敷の方から出て来た。
「やあ、次郎君、やっぱり来ていたんだね。どうだい、きょうは三人そろって叔父さんについて来ないか。お祖父さんもお祖母さんも待ってるぜ。」
次郎は突っ立ったまま恭一の顔を見た。彼は徹太郎にこんなふうに親しく話しかけられるのが、きょうは何かそぐわない気持だったのである。
恭一も変に落ちつかない眼をしていた。
「まあ、徹太郎さん、しばらくでございます。よくおいで下さいました。」
と、その時、お祖母さんが仏間から出て来て徹太郎に挨拶をした。それから、突っ立っている二人を見て、
「お前たち、どうしたのだえ。お行儀がわるい。お辞儀を申しあげたのかえ。」
二人はあわてて畳に手をついた。
「やあ。」
と、徹太郎は二人に軽くお辞儀をかえし、
「どうだい、次郎君、正木には夕方までに帰ればいいんだろう。ついでに大巻にも寄って行くさ。少しまわり道になるが、今からすぐ出かけると、やいぶんゆっくり出来るぜ。」
「恭ちゃん、行こうや。」
次郎は、もう乗気だった。
「うむ――」
恭一は、まださっぱりしないふうだったが、強いて拒む理由も見つからないらしかった。
「俊三はどうだ。大巻のお祖父さんとこに行かないか。」
まだ台所でお芳に世話をやいてもらっていた俊三に向かって、俊亮が言った。
俊三は返事をしなかった。次郎がそっとその方をのぞいて見ると、彼はお芳の耳
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