大師の時代
榊亮三郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)西里亞《シリア》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)瞿曇《ガーウタマ》族|迦葉《カーシヤパ》族に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+慮」、第4水準2−13−58]ぶる

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)とぼ/\と

〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)〔Ahura−mazda_〕
アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください
http://aozora.gr.jp/accent_separation.html
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本日は、弘法大師の御降誕に際しまして、眞言宗各派の管長の方々、並に耆宿碩學の賁臨を忝うし、又滿堂の諸君の來集の中に於て、此の演壇に立ち、宗祖大師の時代につきまして、一塲の卑見を※[#「てへん+慮」、第4水準2−13−58]ぶることを得まするは、私にとりまして、光榮至極のことゝ存じます、演題は、茲に掲げました通り「大師の時代」と云ふのであります、從來、宗祖大師の降誕會を擧行せらるゝ度毎に、緇素の諸名流方が、此の演壇の上に現れまして、或は大師の文章につき、或は才學につき、或は建立せられた教義につき、或は功業遺徳につき、演述せられたものは甚だ多い、此等は、弘法大師の面目其のものを描き出したもので、濃淡の差はあり、色彩の別はありましやうが、謂はば、大師の御肖像を描き出す上に於て、全部又は一部の貢與をなされたものと私は信じます、由來、肖像畫は、畫の中でも、困難なものであつて、就中、宗祖大師のごとき方を言説の力で描き出して聽くもの、見るものをして、其の眉目生動の御姿を彷彿せしむるは、困難至極のことであると想像致しますが、從來發表せられた講演の筆記を拜見致しますに、中々巧にやりとげられたやうに窺はれますが、私の只今諸君の清鑒に供しまするのは、大師の御肖像ではありませぬ、大師の埀跡せられ、活動せられた時代そのものであつて、大師の御一身を、假りに龍に倫擬しますれば、今迄此の演壇に立たれた方々の御講演は、雲に駕し、雨を呼んで、九天の上に飛翔せらるゝ龍を描き出し、又は、描き出んと勉められた
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