ば、諸君の中には或は疑惑の念を起さるゝ方も皆無ではありますまいと存じます。先づ第一に起りさうな疑念は米准那の「米」字は、亞剌比亞語の「アミール」又は「ヱミール」に起源を有する「ミール」の音を寫したとして、如何なる次第で最初の「ア」又は「ヱ」は省略せられて單に「ミール」となつたかと云ふことでありませう。これは「ミール」の聲音を強く力を入れて發音せねばなりませんから、自然最初の「ア」又は「ヱ」は省略さるゝに至つた譯で、殊に准那と云ふ語の發音を後に控へて居りますから、なるべく發音し易く、簡易に發音出來るやうに、最初の「ア」又は「ヱ」を省きたものと思はれます。第二には、然らば最後の「ダ」を何故に省略するに至つたかと云ふ疑念でせう。これも「ヱミール」の場合と似て、「ゼーダ」又は「ザーダ」の「ゼ」「ザ」を強く力を入れて發音せねばなりませぬから、所謂勤勇所要の勞力を儉約せんがために遂に「ダ」の音を省略したのであります。かゝる現象は、我が國の言葉にでも屡々見受けられます。一例を擧げますれば、國名の發音に於て、武藏相模の場合です。此等の地方は上總下總などの國名に於てなほ見らるゝごとく、「プサ」と云ふ、麻
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