も道理であり、娘はお園の隣家の住人であったのだ。
「おでかけかい」
「えゝ、学校に忘年会と新年会の芝居の稽古があるのよ」
「じゃア、そこまで一緒に行きましょう」
「お園さんに悪くないの」
お園は又、大きな冴えた笑いをたてた。
昼間見るツネ子の顔は、そのハリキッタ体格にくらべて、冴えた顔色ではなかった。頬はベニで真ッ赤であるが、ハダの荒れが感じられた。それはいっそう野性と情慾の野放図もない逞しさを感じさせ、シャクレた顔に妙に小さく引ッこんでいる目が、いつもたゞ好色の湖に物をうつしている、けだものゝように思われた。
「君は役者もやるのか」
「えゝ、男役でも、女役でも、レビュウもやるのよ。エロレビュウ。私が主役よ。エロの主役。素裸になるのだもの」
「君が」
「えゝ、私だけよ。さすがに、みんな、裸になる勇気はないわね。だから、見物にいらっしゃいよ」
「いつ?」
「クリスマス。二十四日だか二十五日だか、目下議論が二派に分れて、どっちが本当のクリスマスの日だか、まだはっきりしないのよ」
「クリスマス・イヴなら二十四日じゃないか。もう、たった三日しかないじゃないか」
「二十四日、ほんとネ。どうも
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