ありがとう。今度、町へ遊びに行きましょうよ。つれて行ってネ」
「あゝ行こう」
「これから、学校へ遊びにこない」
 貞吉は少しためらったが、止《よ》すことにした。彼はこの女と二人、ほかの誰からも切り離されたところに、二人だけの別天地、原色的な野合を持ちたいと思った。学校で、又、町でほかの誰と、どのポマードと、勝手に何でもするがいゝ。
 彼自身はそれらから無心に、全てを切り放して、彼自身の土民的なノスタルジヤを満喫すればそれでいゝのだ。
 女は又ウインクして、じゃ、さよなら、と学校へ駈けこんで行った。
[#地付き](未完)



底本:「坂口安吾全集 06」筑摩書房
   1998(平成10)年7月20日初版第1刷発行
底本の親本:「ろまねすく 第一巻第一号」ろまねすく社
   1948(昭和23)年1月1日発行
初出:「ろまねすく 第一巻第一号」ろまねすく社
   1948(昭和23)年1月1日発行
入力:tatsuki
校正:小林繁雄
2007年2月15日作成
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