落語・教祖列伝
神伝魚心流開祖
坂口安吾

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)筏《いかだ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二百|米《メートル》

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ムニャ/\
−−

 カメは貧乏大工の一人息子であったが、やたらに寸法をまちがえるので、末の見込みがなかった。頭が足りなかったのである。そのくせ、大飯をくう。両親は末怖しくなって、人夫をさがしていた山の木コリにあずけた。木コリが試験してみると、鋸だけはうまくひく。器用なことはできない代りに、根気がよくて、バカ力があるので、木コリには向いている。しかし、まだ十の子供のことだから、
「山へ行くと、友だちはいないぞ。人間の顔も見ることができないぞ。ムジナや蛇が親類だ。それでも我慢できるか」
「腹いっぱい食わせてくれれば、どこにでも、いられる」
 それがカメの返事であった。試験に合格して、山にこもった。
 山の木をきりだして、筏《いかだ》にくんで、両親のすむ城下町まで運んでくる。子供だから、木コリの仕事は一人前にはできないが、筏は
次へ
全30ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング