したのは次のようなことであった。
「そうだね。一番先に大事なのは、朝のうちに、ネンボをこいておくことだ」
 ネンボとはクソのことである。毎朝よくクソをしておけ、というのだ。十兵衛はこの第一課を先ずノートに記入した。

 神伝魚心流極意。師口伝。
 初心。
 その一。朝ごとにネンボよくこけ。

 十兵衛の書き残した口伝書の第一巻第一頁にちゃんとそう書いてある。
 神伝魚心流という名は、カメがそういうことに興味をもたないから、十兵衛が源左に相談し、殿の許可をうけて、きめたものである。



底本:「坂口安吾全集 11」筑摩書房
   1998(平成10)年12月20日初版第1刷発行
底本の親本:「別冊文藝春秋 第一八号」
   1950(昭和25)年10月25日発行
初出:「別冊文藝春秋 第一八号」
   1950(昭和25)年10月25日
入力:tatsuki
校正:noriko saito
2009年8月30日作成
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