をして毎日敵機が来て困りますなどと云っているが、案外内心は各※[#二の字点、1−2−22]この程度の弥次馬根性を持っているのではないかと思った。
焼けだされた当座はとにかくやがて壕生活も板につけば忽ち悠々たる日常性をとりもどしてしまう。爆撃中は縮みあがるが、喉元すぎれば忽ち忘れる。私の隣組には幼児や老人達がたくさんいるが、物資の不足という点をのぞけば爆撃に対しては不感症の如く洒々としている。この隣組は工場地帯にあり他地域に比して遥かに多くの爆撃を受けてきた。そして却って落着いたという有様である。
日本の都市は建築物に関する限り欧州と比較にならぬ爆撃被害を蒙るけれども、国民の楽天性はとてもアメリカの爆弾だけでは手に負えまい。私は焼跡の中からそれを痛感し、アメリカの探偵小説の要領ではこの楽天性を刺殺できまいということを微笑と共に痛感しているのである。
[#地付き]『東京新聞』昭20[#「20」は縦中横]・8・12[#「12」は縦中横]
底本:「坂口安吾選集 第十巻エッセイ1」講談社
1982(昭和57)年8月12日第1刷発行
底本の親本:「東京新聞」
1945(昭和20)年8月12日号
初出:「東京新聞」
1945(昭和20)年8月12日号
入力:高田農業高校生産技術科流通経済コース
校正:小林繁雄
2006年9月16日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全2ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング