すがね。そして、私のオルゴールはタバコ入れです。スズリ箱に用いたことはありませんのでね」
そして一同を見て、笑って云った。
「今日も調査に行くつもりでしたが、もうその必要はないようです。なぜオルゴールがスズリ箱の代用に用いられたかが分ると、犯人は分るのです。さて、犯人を取り押えにでかけましょう。本日は予定が変りましたから、泉山さんにはお気の毒ですが、氷川詣でができませんでしたね。私も海舟先生のお説がうけたまわれないので淋しいのです」
虎之介は煮えきらぬ顔だ。オルゴールのスズリバコとは何だ? 海舟先生の邸にはオルゴールはなかったようだな。しかし先生も西洋のことは得意だから、オルゴールのスズリバコを海舟先生に解かせたかった。新十郎の青二才め、オルゴールなんて西洋のオモチャで日本人をおどかして威張りやがるなア、ああ残念だと口惜しがっている。一同は時信家へ急いだ。(ここで一服、犯人をお当て下さい)
★
一同が到着すると、時信家の現場はまだ片づかずにごッた返している。葬儀がいつになるやら、まだそれもハッキリしない。カンジンの心棒たる唯一の男の大伍は葬式がすむとクビだ
前へ
次へ
全55ページ中50ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング