った。
オカネがお志乃を選んだのは、第一に片目しかないというのが気に入ったのである。片メクラと云う言葉もあるように、どうやら片目でもメクラのうち。アンマに仕立てることができる。アンマの稼ぎができないような養女はこまるが、全然メクラでもこまる。なぜなら、せっかく養女にもらうのだから、女中の代役がつとまらなければ意味をなさん。それには片目が見えなくては困るという次第で、見えない目ではアンマをやり、見える目では女中をやる。これがアンマの養女というものだ。
お志乃は美人ではないが、まア、醜いという顔でもなかった。これもオカネの気に入った。女アンマの稼ぎは裏表と云って、裏の稼ぎもあるし、それはアンマの養女にとっても同じことだ。
オカネの狙いたがわず、お志乃は変に色ッぽい女に育ちあがったから、オカネは旨を含めて、お客に手を握られたのを報告させ、その中からお金持の爺さんを選んで、特にサービスを差許す。そういう旦那が三人あった。
銀一とお志乃は車にのって稼ぎにでる。車夫を抱えると月給がいるから、近所の車宿の太七という老車夫と予約し、二人のアンマ代には車代も含まれているという仕組みになっているの
前へ
次へ
全46ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング