無毛談
――横山泰三にさゝぐ――
坂口安吾
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)仰有《おっしゃ》る
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)チャラ/\
−−
私のところには二人ねるだけのフトンしかないのである。だから、お客様を一人しかとめられない。
先日、酔っ払って、このことを忘れて、横山隆一、泰三の御兄弟を深夜の拙宅へ案内した。気がついた時は、もう、おそい。もっとも、兄弟だから、いゝようなものだ。第一、こんなにバカバカしく仲のよい兄弟というものは天下無類で、それに二人合せたって一人前ぐらいの容積しかないのだから、よかろうというものだ。
カゼをひかせちゃ、こまるから、コタツをいれようと云うと、ダメなんだ、弟の奴、子供の時から寝相がわるく、なんでも蹴とばすから、火事になる、と兄貴が仰有《おっしゃ》る。
御兄弟、上衣をぬいで、ワイシャツをぬぐ。すると、ちゃんと、パジャマをきていらっしゃる。シキイをまたげば、いつ、どこへ泊るか分らないから、タシナミ、敬服すべきものがあった。
御兄弟、ベレをかぶっていらっしゃる。さて、お
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