ね」
「バカな。娘は用をたしてたんだよ。そこへお前が現れたから、ビックリして、シャニムニ滝の中へ押しこんだのだ」
「変った推理をしましたね。嫉いてるね、お父さん」
「お前、下へ行って、木ノ葉天狗かお握りサンにきいておいで。ここが何病にきく温泉で、滝にうたれるのが何者かということをね。そして娘が何者であるか、また念のため、お前自身が何者であるかということもね。その間に私たちは荷造りしているよ。日のあるうちに退散だ」
 その日のうちにホウホウのていで逃げだしたのである。
 吊橋を渡り、急ぎに急いで谷底から上へ登る。登りつめて谷底の見えないところまで来ると、梅玉堂はようやく余裕がでた。
「すばらしい大自然よ」
 彼は改めて大きな感動で一パイだった。そして考古学の方はダメだったが、暗黒のホラ穴から美女を発掘したことに至上の満足を覚えたのだ。



底本:「坂口安吾全集 14」筑摩書房
   1999(平成11)年6月20日初版第1刷発行
底本の親本:「講談倶楽部 第五巻第四号」
   1953(昭和28)年11月10日発行
初出:「講談倶楽部 第五巻第四号」
   1953(昭和28)年11月10日発行
入力:tatsuki
校正:noriko saito
2009年7月19日作成
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