興しているであろう。そして復興した銀座へ、研究室からフラリと散歩にでてこられるがよろしい。陛下と気のついた通行人の幾人かは、別にオジギもしないであろうが、道をゆずってあげるであろう。
そのとき、東京も復興したが、人間も復興したのだ。否、今まで狐憑きだった日本に、始めて、人間が生れ、人間の礼節や、人間の人情や、人間の学問が行われるようになった証拠なのである。
陛下よ。まことに、つゝましやかな、人間の敬愛を受けようとは思われぬか。
たゞ今の旅行のようでは、狐憑きの信仰がふえる一方に、帽子を握って手をふる背広服の人形がメーデーに現れたり、「アヽ、ソウ」などというような流行語が溢れて、不敬罪が流行ハンランするに至るであろう。
底本:「坂口安吾全集 06」筑摩書房
1998(平成10)年7月20日初版第1刷発行
底本の親本:「風報 第二巻第一号」
1948(昭和23)年1月5日発行
初出:「風報 第二巻第一号」
1948(昭和23)年1月5日発行
入力:tatsuki
校正:小林繁雄
2007年2月18日作成
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