百にまわして点をかせがせようという算段であった。
 結果はマーシャルが意外に不振で、予期しないコンノの優勝という奇妙な結果になった。千五百に古橋が出場しても、万人期待のマーシャルとの熱戦は見ることができなかったであろう。
 しかしだね。それは結果から見ての判断ですよ。マーシャルは古橋にせまる記録をだした直後であり、コンディションもよいと言っていた。彼と古橋との対戦は日本のファンのみでなく全世界の水泳ファンの期待であったし彼が日米競泳に番外として来日したのも古橋と競技したいためであった。
 しかし日本は日米競泳の勝敗にこだわって、全世界の期待を、明朗な話題を、裏切ったね。
 アマチュア・スポーツは勝敗も大事だが、もっと明朗に打算なくベストをつくし、いつも明るい話題であることが大切さ。
 アジア諸国の水泳のレベルが低いなら、むしろ率先して大会に参加し、彼らに良きフォームを示し、すゝんでコーチにも応じるような親切が欲しいなア。それがスポーツの正しい在り方で、国際的な礼儀でもあろうじゃないか。日本は水の澄んでいる国なんだよ。



底本:「坂口安吾全集 11」筑摩書房
   1998(平成10
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