いはなして薪をつんで火をつけ、着物に火がつくと消してやって長く苦しめるというやりかただが、苦しむのが一時間から数時間、死にいたるまで朗々と祈祷をとなえるもの、観衆に説教するもの、子をだく母は子供だけは苦しめまいとかばいながら、我慢をおし、今にゼススさま、マリヤさまのみもとへゆけるのだからとわが児に叫ぶ。その荘厳には、観衆にまぎれて見物の信徒はますます信教の心をかため、縁のない観衆も死刑執行の役人どもまで、感動してかえって信仰にはいるものが絶えないという始末であった。
 温泉岳の熱湯ぜめといって、噴火口の熱湯へ縄にくゝってバチャンと落してひきあげ、また、落し、また、ひきあげる。背中をさいて熱湯をそゝぐというのもある。熱湯のかわりに煮えた鉛をそゝぐのもある。鋸で、手と足を一本ずつひき落して、最後に首をひくというのもある。手の指を一本ずつ斬り、つぎに耳を、つぎには鼻をそぐという芸のこまかいのもある。蓑踊りと称するのは、人間を俵につめ、首だけださせて、俵に火をつける。俵のなかのからだが蓑虫のようにビクビクもがくところから蓑踊りと称したという。
 最後に穴つるしというのを発明した。手足を特別な方
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