から、血だらけの衣類と、三百万円と、兇器が、すでに発見されて、彼らの到着を待っていたのである。居古井警部はニッコリ一笑して、予期した品々を指してみせ、そして二人の肩をたたいた。
「これが、君たちから、ヒントをもらった御礼だよ。ほかの新聞記者がこないうちに、すぐ支局へ走って、東京の本社へ電話したまえ。そして、例の尾行記を大至急、書きあげることさ。じゃア、サヨナラ」
 彼はニヤリと笑って二人の耳に口をよせ、
「新聞社の金一封と、私の警察の金一封と、どちらが重いかな。ワッハッハ」
 笑いながら、二人を部屋から押しだして、サヨナラ、とささやいた。



底本:「坂口安吾全集 09」筑摩書房
   1998(平成10)年10月20日初版第1刷発行
底本の親本:「講談倶楽部 第二巻第五号」
   1950(昭和25)年4月10日発行
初出:「講談倶楽部 第二巻第五号」
   1950(昭和25)年4月10日発行
※底本は表題に「投手《ピッチャー》殺人事件」とルビをふっています。
入力:tatsuki
校正:花田泰治郎
2006年4月8日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの
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