ような雄々しい考えを二人や三人考えても多くの市民が相手にしないであろうことは明らかで「そんげなもん、いらねわ」(そんなもの、いらないよ)とオトトもオカカも軽くかたづけてしまうことは明白なのだ。
先刻湯づけの話を書いたが、誤解のないように書き添えるが、新潟は古来遊ぶ町だから、独特のうまい食べ物は非常に多いところだ。特に冬向きのものに多い。北海道の「鮭ずし」は元来新潟のもので(北海道は新潟人の出稼ぎ人が最も多く土着した)似たような「鮎ずし」もあり、海の魚も川の魚も美味だが、土地の魚は多くはとれないので一般用はよその魚かも知れない。ソバも菓子もわるくない。独特なのに白砂糖をつけてたべる「オヤキ」というのがあるが塩アズキだから冬でも一日しかもたない。冬以外はつくれない。この塩アズキに砂糖をつける味が独特で、不便を承知で、ぜったいにアズキと砂糖を一しょに煮ないところがこの土地の良さ、よく味覚を知っているところと云えるだろう。その点は良心的な町柄である。
[#地付き]『暮しの手帖』昭30[#「30」は縦中横]・3
底本:「坂口安吾選集 第十巻エッセイ1」講談社
1982(昭和57)年8月12日第1刷発行
初出:「暮らしの手帖」
1955(昭和30)年3月号
入力:高田農業高校生産技術科流通経済コース
校正:小林繁雄
2006年9月16日作成
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