長逗留で、お金が足りなくなったので、ノブ子さんにたのんで秘密にお金をとどけて貰う手筈をしたが、ノブ子さんは田代さんと同道、温泉までお金をとどけに来てくれた。
 田代さんはノブ子さんが好きで、一杯のみ屋のマダムは実は口実で、ていよく二号にと考えてやりだしたことであったが、ノブ子さんも田代さんが好きで表向きは誰の目にも旦那と二号のように見えるが、からだを許したことはない。
 久須美の秘書の田代さんが来たものだからエッちゃんが堅くなると、
「イヤ、そのまま、私は天下の闇屋です、ヤツガレ自身が元来これ浮気以外に何事もやらぬ当人なんだから」
 実際私は田代さんが来てくれた方が心強かった。なぜなら彼は自ら称する通り性本来闇屋で、久須美の秘書とはいっても実務上の秘書はほかにあって、彼はもっぱら裏面の秘書、久須美の女の始末だの、近ごろでは物資の闇方面、そっちにかけてだけ才腕がある。彼を敵にまわさぬことが私には必要だった。
「これ幸いと一役買っていらっしゃったのね。ノブ子さんと温泉旅行ができるから。もっぱら私にお礼おっしゃい」
「まさにその通りです。ちかごろ飲食店が休業を命ぜられて、ノブちゃんは淫売しな
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