合した帝大の選手連中に解答をもとめた。この連中は碁打のアカデミシアンで呉七段だの秀策を科学的に信頼してゐる。だから隠れた粋な手筋がある筈だと面々汗だくで唸りだしたが駄目なのである。
で、今度はアテネ・フランセへ電話をかけた。仏蘭西の学校へ何用でとお考へかも知れないが、近頃、碁の用はこの学校が間に合ふのである。即ち、野上二段、岡田初段が駈けつけてきたではないか。手品のやうな学校であります。
そこで結局どういふ事になつたかといふと野上岡田三段(合せて)も渡りの筋を見付けることが出来なかつた。呉七段の読違ひといふ結論に達し、僕は一命を拾つたばかりでなく軍歌を歌つて我家へ帰つた。
途中、上野は砂子屋へ立寄り尾崎一雄大人を吃驚させて益々快的に帰宅しようかと思つたが、やめた。といふのは、囲碁春秋には鉢巻の大人も随筆を書くさうだから、大人は随筆の名人だが、棋譜入りの随筆は書けないに極つてゐて、その時全く落胆し、垂涎するに極つてゐるからであつた。
[#「(参考図一)」のキャプション付きの図(fig45851_01.png)入る]
[#「(参考図二)」のキャプション付きの図(fig45851_02.png)入る]
底本:「坂口安吾全集 03」筑摩書房
1999(平成11)年3月20日初版第1刷発行
底本の親本:「囲碁春秋 第四巻第一号」
1940(昭和15)年1月1日発行
初出:「囲碁春秋 第四巻第一号」
1940(昭和15)年1月1日発行
入力:tatsuki
校正:noriko saito
2008年9月16日作成
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