碁にも名人戦つくれ
坂口安吾
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)秀哉《しゅうさい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)本因坊|秀哉《しゅうさい》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ギリ/\
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十何年前のことだが本因坊|秀哉《しゅうさい》名人と呉清源(当時五段ぐらいだったと思う)が争碁を打ったころは碁の人気は頂点だった。当時の将棋は木村と金子が争っていたが、人気はなかった。近ごろの将棋名人戦のすごい人気に比べて碁の方は忘れ去られた淋しさである。
将棋の人気はいうまでもなく実力第一人者を争う名人戦の人気である。昨日の名人もひとたび棋力衰えるや平八段となり時にBC級へ落ちることもなきにしもあらずである。実力だけで争う勝負というものは残酷きわまるものである。その激しさ、必死の力闘が人気を生むのである。
碁の本因坊戦ときてはたかが一家名をつぐだけのことにすぎない。今日の新時代では法律的にすら家名が失われているのに本因坊という一家名を争うことがすでにコッケイであり、事実においてその試合内容も棋院大手
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