手の職である。どうだ。わかるか。これが分れば日本が分る。オレは進駐軍に神道を普及したいと思うとるが、手の霊であるということが分らんのだなア」
 さすが物には驚かぬ才蔵も、この新学説にはおどろいた。バカかと思うと、そうでもない。将棋をさしながら喋っている。時々、ギロリ、ギロリ、と才蔵を見つめる。その眼光の鋭いこと。一見小柄の好男子だが、ゴリラの熊蔵と盤に対して、堂々と威勢を放っているから、さすがに土建の親分である。
 ところがゴリラの熊蔵の対局態度が珍しい。彼は盤をかくすように覆いかぶさって、五分、十分、十五分、沈々として微動もせず考えこんでいるのである。
「話というのは、ほかでもないが、お前のとこの正宗常務だなア。オレが助けてやろうと思うとるが、あのままでは、一週間で狂い死んでしまうぞ。支離メツレツじゃ。今朝などは、もう、ひどい。寝小便はたれる。着物にクソをつけて歩いておる。やつれ果てゝ、二目と見られたものではないぞ。秘書たる者が温泉につかって酒をのんでる時ではないぞ」
「ヘエ。アイスミマセン」
「今朝オレが帰る時にマニ教の内務大臣から話があって、明暗荘に秘書の者がおるから伝言せよと言
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