たく衰えて、気息エンエン、冬眠状態、ウワゴトも言いかねない有様となった。放置すれば、神の術にかかってしまう状態に近づいている。
 そこで天草次郎は考えた。
 すると、天啓が浮んできた。
 天草商事も急変する世の移り変りには勝てず、商運まったく行きつまり、借金で首がまわらない。なんとか起死回生の手を打たなければならないところへ追いこまれている。
 これあるかな。マニ教をそっくり利用してやれ、と、ふと気がついた。
 それはお歴々が嵐の如く駈けこんできて、蹴とばし、ブン殴り、突き倒した時であった。
 天草次郎は、ふと夢からさめたように首をあげた。そしてスックと立ち上った。彼は一歩前へ出た。
「オオウ!」
 ジャングルの猛獣のような唸り声を発した。
「オオウ!」
 もう一声。
「ありがたし。ありがたし」
 彼はガバとひれふした。
「尊し。尊し」
 彼の全身ふるえている。
「マニ妙光。マニ妙光」
 頭上に手をすり合わせる。狂おしい有様である。ふと頭をあげて、光秀と半平を見すくめて、
「コラ! お前ら、ボンヤリするな。あれが見えぬか。あれが聴えぬか。尊いお声がきこえているぞ。なぜ拝まぬか」
 必死の形相に打たれて、光秀と半平もハッとひれふすと、
「マニ妙光。マニ妙光」
 頭上に手をすり合せはじめる。
 ひとしきり拝し終って、次郎はキッと端坐して、お歴々に一礼し、
「長らくの不敬、まことに申しわけありません。ただ今、神様の出御を拝し、さいわいに、不敬の段、お詫び申しあげましたところ、お許しをうけ、おききの如くに尊い神示を拝しました。これもひとえに皆様の慈愛によるところ、厚く感謝いたします」
 神様の使者たちも、こう先を越されては勝手がちがう。しかし、さすがに落付いたもの、スキは見せない。
「ウム」
 神の使様は大きくうなずいて、
「御神示を復唱してみい」
「ハッ。天草商事の全社屋、全事業、全財産を差しあげてお許しを乞いましたところ、おききゆるし下され、東京へ遷座し、かしこくも天草商事本社を神殿として御使用下さる由申渡されました。社の事業、全財産のみならず、私物一切奉納して、奉公いたします。皆様の宿舎には、社の寮、私の私宅、全部提供いたします」
「コウーラッ!」
 よろこぶかと思いのほか、神の使者はにわかに鬼の相となって、一喝のもとに天草次郎を蹴倒してしまった。それと同時に、他の二
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