起すと、あとは爽快になるのである。
ツル子はひとつの計画をもち、大きな期待をかけていた。それはサルトルを悪道から救いだすことであった。ツル子の本心はサルトルに二千万円の荒稼ぎをさせたり、商事会社を起させたりすることではなかった。正道につかせたいのだ。
才蔵のようなチンピラ悪者とちがって、サルトルはマトモな才腕もあるし、厚い人間味もあるのである。本来は正義を愛する人間であり、正道についても、成功しうる人物なのだ。
天草商事の悪者どもをこらしめるハカリゴトは、同時にサルトルを正道に立ちかえらせるハカリゴトにも利用したい。ツル子はこう考えて、期待にもえ、計略の工夫に熱中したが、それが彼女を爽快な亢奮にかりたててくれるのである。
憎さも憎し、チンピラ悪漢。ツル子は才蔵をにらみつけて、
「人を悪事に誘うのは、よしてよ。一人で、はやく引返して、ブルジョアになりなさいな。私、社へありのまま報告します」
「チェッ。つまらねえの。そんなのないや」
「ないこと、ないでしょう。一足先に、ブルジョアになれてよ。早く、ひっかえしたがいいわ。さア、はやく」
「ツルちゃんが不賛成なら、ボクも、よすよ」
「私のせいにすることないでしょう」
才蔵はくさりきって、シカメッツラをしている。
目的はツル子を誘って旅館へ泊るところにある。ニセモノを掘っても仕様がない。
しかしツル子と共に箱根を往復する機会は今後もありうる見込みがあるから、はやる胸をおし殺して、我慢している。
二人は天草商事へ帰って報告した。
「全然ホンモノだもの。おどろいたッたら、ありゃしねえや。一カン、七八貫、十二カン、全然純粋ときやがら。宝の山を持ちながら、奴め、処分に困っていやがるのさ」
才蔵はポケットから阿片の紙包みをだしてみせた。中味はホンモノに包みかえてきたのである。
「フウン。ホンモノか」
半平はこう唸ったが、一座はシンとしてしまった。ひらかれた紙包みの中の二グラムほどの阿片をにらんで、一同、しばし、声をのんでいる。
天草次郎はちょッと時計をのぞいたが、
「近藤ツル子、すぐ、箱根へ戻れよ。五時には、着ける。サルトルの宿へ泊って、彼を宿から動かすな。さて、それから、と」
彼は考えて、
「明日の午ごろ、小田原の例のところへサルトルを案内しろよ。そこで商談するからと云って。二時ごろまで、ひきとめといたら、いい
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