検分はツル子をあざむいて阿片の実存を信じさせるのが目的だと思っている。
 サルトルはそッと才蔵にささやいて、
「雲さんや。たのむぜ。石油カンに黒いものをつめて埋めておいたから、いかにも阿片だというオドロキを表情たっぷり演技してもらいたいネ。ツル子さんは、なかなか観察が鋭くていらッしゃるから、油断はくれぐれも禁物」
 あくまで、こう、だましておく。一方、ツル子にも注意を与えて、
「雲さんの眼力は油断ができませんから、あくまでスパイになりすまして、見破られないように、たのみますよ」
 手筈をととのえておいて、三人は密林の奥へふみこむ。
「ここ、ほれ。ワン、ワン」
 こう呟きながらサルトルが地を掘ると、石油カンが現れた。
「さて、雲さんや。雲隠大人《エンインダーレン》の眼力をもって、よッく、ごらん。これなる物質は何物なりや。そのものズバリ。いかが」
「ウーム」
 才蔵はビックリ仰天。一と唸り。
 少量をつまんで匂いをかいでみる。カンの中を掘ってみて、その内容の底までギンミして、
「ヤヤ。実に」
 フウと大息。呆れはててサルトルの顔を見つめて、
「みんなホンモノの阿片じゃないか。エ、オイ、おどかしやがる」
「ハッハッハ。嘘だと思っていらっしゃるから、いけません。サルトルの一言、常に天地神明にちかって偽りなし」
「雲隠さん!」
 ツル子はキッと彼をみつめて、
「ほかのカンも調べてみなければ、ダメよ」
「ウン。しかし、この一カンだけでも莫大な財宝だ。なんだか、夢みたいな話だよ。薄気味がわるくて仕様がねえや」
 一つ一つカンを掘り出して、つぶさに調べて、才蔵は首をふりふり、
「どうも、いけねえ。ワシア、負けた。よう、言わんわ。大泥棒め。凄い物を掘りあてやがったな。証拠物件。見せなきゃいけないから、一とつまみ、もらってくぜ」
「オットット。そうは、あげられない。これだけで、タクサン」
 ホンの二グラムほどつまんで、紙につつんでやる。
 サルトルは元の通りカンをうめて、地をならし、
「人が見たら蛙となれ」
 こうマジナイをかけて、帰途につく。
 サルトルはニヤリと笑って、
「今晩のうちに、場所を変えておかなきゃいけない。天草商事さんは紳士でいらッしゃるから」
「バカ言え。キミみたいな大泥棒とは素性がちがってらア」
「大泥棒はないでしょう。イントク物資をテキハツしたにすぎんですな」

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