正宗菊松神様となること
サルトル、才蔵、ツル子の三名は箱根へついた。
サルトルは石川長範に報告して、
「イヤ、どうも。敵もさるもの。一筋縄では手に負えぬ曲者です。アタクシも社長に広言をはいた手前がありますから、かくなる上は討死の覚悟で一戦を交えることに致します。いさゝか戦闘は長びきますが、当分の間、アタクシをこの仕事に専念させていたゞきたいので、一向に華々しい戦果もあげえず、ムダに時間のみ費して恐縮ですが、アタクシも後へひくわけには参りません。戦果なき時は、いさぎよく責任をとりますから、ここはアタクシに一任していたゞきたく存じます」
「よろしい。キサマを見込んで一任するが、立派にやってみい。オレは東京へひきあげるから、後はまかせる。しかしキサマ、すごい美形をつれてきたそうだな」
「ハア。あれなる美形は敵の間者で」
「間者?」
「シッ。声が高い。アタクシの眼力に狂いはありません。敵の策にのると見せて、当地へつれて参りましたが、間者というものは、これを見破っている限り、これぐらい調法な通信機関はありませんな。こちらで、こう敵方へ知らせたいと思うことを、ちゃんと敵方へ報告してくれます」
「ミイラとりがミイラになるなよ。キサマの相には、女に甘いところがある。見るに堪えないところがあるぞ」
「ハハッ。相すみません。充分自戒しておりますから、御安心のほどを」
そこで石川長範は愛妾とゴリラをつれて帰京してしまった。
サルトルはツル子への約束、正宗菊松を助けてやりたいと思うから、マニ教の神殿へ偵察におもむいた。
石川組の社長の片腕であるから、神様も粗略には扱わない。内務大臣が自室へ招じ入れて、
「ナニ、正宗のことについて、話があるとな」
「ハッ。実は社長に後事を託されまして、命によって伺いましたが、天草商事も左前の様子で、身代金がととのわず、社長も間に立って困却しております」
「イヤ、それはイカン。身代金というものは神示によって告げられたもので、神の御心である。神の御心であるから、俗界と違って、ビタ一文、まけるわけには参らぬ。左様な不敬は相成らぬぞ」
「それはもう重々心得ておりますが、俗に無い袖はふれぬ、と申しまして、神界と俗界の結びつきは、まことに、むつかしゅうございますな」
「しかし正宗には当方も困却しているぞ。匆々に身代金をたずさえて引きとってくれなければ、当方
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